ある日の昼下がり [桐音のコト]
よく晴れたある日のこと。
私は久し振りに街に買い物に出てきていた。
こんな平日の昼間から、ここ横浜をぶらぶらできるのは大学生の特権だろう。
今日は授業をとっていないし、鍛治仕事もお休みなので、息抜きがてら洋服などを見に来たのだった。
だというのに……
「……平日だっていうのに結構な人ね」
行き交う人の多さに少し眩暈を感じながら―――それでも休日よりは遥かに少ないのだが―――私は少し遅い昼食をとるべく、中華街を歩いていたのだった。
「豚まんかあんまんか、問題はそこね……」
人ごみに中てられたのか、半ば真剣にどうでもいいことを考えながら視線を巡らせると、私の真横を信じられない影が通った。
ある夜の何気ない日常 [桐音のコト]
――――――!?
布団から跳ね起きる。
鼓動が速い。
どうやら何か夢を見ていたようだ。
覚醒とともに夢の内容は急速に失われつつあるが、印象はハッキリと残っている。
――――――懐かしい夢を見た。
周りは夜の闇に包まれている。
窓から漏れているのはほんの一欠けの月明かり。
枕もとの時計に手を伸ばせば、3時を少し回ったところだった。